• 準備力
2017/08/17

肌とストレス(後編)【肌からストレスオフを考える④】

医療や美容分野で近頃耳にする「ホリスティック」、ご存知でしょうか。ギリシャ語で“全体”を意味する「holos(ホロス)」を語源とする言葉で、「whole(全体)」「health(健康)」「heal(癒す)」なども由来していると言われます。
桜美林大学・山口創先生の連載第4回<後編>では、ストレスによって肌の状態が悪化するメカニズムの続きと、ホリスティックな視点から捉えた肌とストレスのお話をうかがいます。

■「肌を掻く」「爪を噛む」はストレスをリリースしようとする無意識行動

前編では「チョコレートと肌トラブルの関係」「肌の冷えとバリア機能の低下」についてお話しましたが、後編では「肌のかゆみと掻破(そうは)行動」からお話したいと思います。

かゆみは肌にとって大敵です。特にアトピー性皮膚炎の患者は、ストレスを感じると、細胞の働きをコントロールしている神経成長因子や、傷ついた肌の回復を促すサブスタンスPといった物質のバランスが肌で崩れ、かゆみが生じて掻いてしまうことがあります[1]。これを「ストレス性皮膚炎」といいますが、皮膚疾患のない健康な肌の人でも、ストレスで掻破(そうは)行動を起こしてしまう場合があるのです。

たとえばストレスや不安があると爪を噛んでしまう子どもがいますが、それと似た現象です。これは肌に強い刺激を与えることで、ストレスをリリースしようとする無意識の行動だと考えられています。掻くと肌を傷つけるので、肌トラブルの原因に。ニキビなどがあるとそれ自体のストレスによって無意識のうちにその部位を掻いてしまい、さらに悪化させてしまうことがよくあります。

肌荒れやニキビ、湿疹など肌トラブルが続くようなことがあったときには、鏡を眺めて悩んだり、何かを塗って治そうとするかもしれません。しかし、自分の心の状態やストレス、行動パターンを見直してみる。そんなタイミングであると捉えることもできるのではないでしょうか。


■心も体も。ヒト全体でストレスを考えるホリスティックな視点

ここまで肌とストレスの関係に関するメカニズムについてお話しましたが、さらに広く、心と体を含めたヒト全体で捉えるホリスティックな視点から見ていきたいと思います。特にニキビや吹き出物の場合は、ホリスティックに見ていく必要があります[2]。専門的には、「腸-脳-肌軸」のサイクルと言います。

Bowe, W.P. & Logan,A.C. (2011)より引用

①ストレスを受ける
②自律神経のバランスが崩れ、便秘になりやすくなったり、腸内フローラと呼ばれる善玉菌・悪玉菌の割合に変化をもたらす。
③ファストフードのような食物線維を欠いた高脂肪食を食べたくなることで、さらに腸内フローラが悪化。
④善玉菌(中でも特にビフィズス菌)が減少し、悪玉菌から毒素であるエンドトキシンが作られる。
⑤腸の粘膜を透過し、エンドトキシンが血流にのって全身に廻っていく。
⑥エンドトキシンにより肌細胞の正常な機能が損なわれ、ニキビなどが出る原因に。結果さらにストレスが増加する(①に戻る)。

この図で重要な点は、“ストレスは全身に悪影響をもたらす”点であり、それは当然、肌にも当てはまります。ストレスを受けて肌の状態が悪化すると、それによりさらにストレスがより高まってしまう……そんなネガティブなスパイラルが起きてしまうのです。


■肌ケアへの意識を高めてストレス予防を

鏡で自分の顔を観察してみてください。その肌の変調は、ストレスがたまっているサインかもしれません。心と体をしっかり見つめ、その原因をよく見極めて対処することが快方への早道です。そして、もう一つ大事なことがあります。肌からストレスを予防すること、すなわち、普段から良好な肌の状態を保つ意識です。

かゆみを感じて皮膚を掻きたいときに「掻いてはいけない」とがまんして自身の行動を制止する、あるいは肌の乱れで気持ちが憂うつになる。そんな肌に起因する新たなストレスを防ぐこと、それはまさに、肌からのストレスオフの一つと言えるでしょう。


肌とストレス(前編)【肌からストレスオフを考える④】

肌は第三の脳である【肌からストレスオフを考える①】
「触れる」で分泌を促す。ストレスを緩和するオキシトシン【肌からストレスオフを考える②】
触れることで感情を呼び起こす「C 触覚線維」とは?【肌からストレスオフを考える③】



(引用)
[1]片桐一元 他(2009)急性ストレスによる皮膚バリア機能障害 皮膚科学, 8, 690-694.
[2]Bowe, W.P. & Logan,A.C. (2011) Acne vulgaris, probiotics and the gut-brain-skin axis - back to the future? Gut Pathogens, 3:1



執筆・監修:山口創

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