• 準備力
2018/12/13

感情を自律神経×脳波で探る芝浦工大のユニークな研究【ロボット×ストレスオフな未来①】

今回から始まるオフラボの連載は、ちょっと興味深いロボット×ストレスオフのお話。“人間とロボットの関係”を研究している芝浦工業大学情報工学科の菅谷みどり先生に、これからのストレスオフに役立つロボットの未来についてうかがいました。第1回は、その鍵を握る「感情」について。自分でも説明のつかないあのもやもや感情が「怒り」なのか、はたまた「悲しさ」なのか? 心理学×自律神経×脳波で明らかになるというのです。

■ストレスを助長させる自分でも説明できない“負の感情”

例えば上司から、身に覚えのないミスを叱責された時に生じるストレス。あなたの心には紛れもない負の感情が沸き上がっていることでしょう。でも、その気持ち、濡れ衣を着せられたことへの「怒り」なのか、信頼していた上司から責められたことの「悲しさ」なのか、人前で叱責されたことの「くやしさ」なのか。きっと、それらすべてがないまぜになったような、自分でも説明のつかない“もやもや”した感情なのではないでしょうか。
そして「もやもやを抱えている自分」という事実が、さらなるストレスになることも。また、どうやら友人が失恋して落ち込んでいるらしい時。「もっといい人がいるよ!」と励ますべきなのか、「辛かったね」となぐさめるべきなのか?

こんな風に相手の感情は、ぱっと見ではわからないものです。また同じ負の感情でも、「怒り」や「悲しみ」などさまざまに分類され、その境界は実に曖昧。もっと感情のディテールに迫ることができれば、世の中のコミュニケーションに役立てることができるのではないかという視点から、芝浦工業大学・菅谷チームでは、人間の“深層”にある感情を分析する研究を行っています。あえて“深層”としたのは、「表情」や「声」など表層に現れる感情ではない、本人も気づかない深層の感情は、実はそれほど解明されていないから。私たちのチームのユニークさは、ストレスとも密接な「自律神経」や「脳波」などヒトの生体情報から感情をひも解く挑戦にあります。



■ラッセルの円環モデル×生体情報で「感情」の深層に迫る

「ラッセルの円環モデル」をご存知でしょうか。これは心理学の分野で長年用いられているモデルで、「覚醒・眠気」と「快・不快」をXY軸に、感情の喜怒哀楽を分類します。私たちの研究では、この心理学の定番のモデルを情報工学の視点で使用しています[1,2,3]。

<ラッセルの円環モデルの利用>



この心理学のモデルに従った感情は、実のところ計測で示されたものであはりません。そこで私たちは、実際にこれを計測し、数値化しようと考えました。具体的には、縦軸の「覚醒・眠気」を“脳波”軸、「快・不快」を“自律神経”軸とし、それぞれ脳波センサと脈拍センサを用いて計測して感情を特定するというものです。センサを用いることで計測値がリアルに取得でき、本人も気づかない、さまざまな感情がわかるのです。

しかし他人とのコミュニケーションにおいては、少し注意が必要です。なぜなら、知られたくない、心の奥にしまっておきたい感情までもわかってしまう可能性があるから。ですが、冒頭に述べたような自分でも説明できない“ないまぜな感情”から“深層の感情”がわかれば、自分自身をストレスオフする手立てもわかり、メンタルケアにきっと役立つでしょう。また信頼関係がある相手とこうした感情を積極的に共有することで、いい影響があるかもしれませんね。
次回は、この感情分析手法を用いて行った実験結果をご紹介します。




【参考文献】
[1] James A. Russell (1980) A Circumplex Model of Affect. It Journal of Personality and Social Psychology Vol.39 No.6 pp.1161-1178
[2] Yuhei Ikeda, Ryota Horie, Midori Sugaya, Estimate Emotion with Biological Information for Robot Interaction, 21st International Conference on Knowledge-Based and Intelligent Information & Engineering Systems (KES-2017), Marseille, France, 6-8, Sep, Procedia Computer Science, Vol.112, pp.1589-1600, Year 2017.
[3] 池田悠平、岡田佳子、堀江亮太、菅谷みどり, 表情と生体情報を用いた感情の推測方法の検討, マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICMO2016)シンポジウム, 2016年, 7月.



執筆・監修:菅谷みどり

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