• 準備力
2019/03/14

デジタルネイティブな10代の“伝える力”を育む!都立高校のワークショップ

平成26年度の「全国学力・学習状況調査」によると、「友達に伝えたいことをうまく伝えることができる」という質問に対して、中学3年生の25.2%が「どちらかというと、当てはまらない」、4.4%が「あてはまらない」と回答。約3割の子どもが、“伝える”ことに不安を感じているようです。「コミュニケーションは、数学のように一つの正解はありません」そう話すのは一般社団法人日本ナンバーワントレーナー協会・代表理事の中澤仁美さん。2014年から都立高校で行っている、“コミュニケーション”をテーマにしたワークショップの話をうかがいました。

■インターネットやスマホの登場でコミュニケーションが劇的に変化

友だちや恋人とのコミュニケーション手段といえば、直接会うか電話、あるいは手紙? つい20年前まではそれが当たり前でしたが、インターネットの出現で状況は一変。さらに10年前にはスマホも登場して、原始人にとっての火のごとく“文明の利器”を手に入れた現代人のコミュニケーションはがらりと変わりました。
と、以前と比較することで世の中の変化を感じられるのは30代以上のこと。デジタルネイティブな10代にとっては、インターネットを介したSNSやブログでのやりとりがもはや基本。それはそれで時代の流れではありますが、時に一方通行になりがちなコミュニケーションに慣れてしまっていることで、多感な思春期の悩みやストレスが増えてしまっています。



■都立高校で始まっている“伝える”“考える”ワークショップ

平成28年度から、都立高校で「人間と社会」という新教科が始まっているのをご存じでしょうか。急激な社会の変化の中で課題となっている「道徳」、そして働き方の多様性が広がった「キャリア」に焦点を当て、体験や演習を通して、解決する力、考える力を養うというもの。この一環として、中澤さんは都立高校11校で「大学生と行うワークショップ!」を2014年から担当。「高校生は基本的に学校と家庭の往復で、決して世界は広くありません。普段交流がなく、新鮮な存在の大学生は、年が近い人生の先輩でもあります。思春期の真っ只中、先生や親など大人には話しにくいことも、大学生には心を開きやすいようです」(中澤さん)。ソーシャルデザインの講師を務める日本大学藝術学部の大学生と共に取り組んでいます。

ワークショップは、大学生を含む6人程度のグループになって、さまざまなテーマでディスカッションを行うスタイル。ある高校では「インスタに投稿したことが自慢のようにとられ、炎上してしまった」というケースについて話し合いました。「いろんな意見があるのはしょうがないんじゃない?」「単なるやきもちだよ」「かっこ悪い」など、高校生たちにとっては身近で、かつモヤモヤを感じながらも正面切って話すことのないトピックだけに、通常の授業では見られないような活発な意見交換が。「このディスカッションを通して、伝えることの難しさを知る生徒もいれば、自分の意見にみんなが耳を傾けてくれる喜びに気づく生徒もいます。いずれにせよ、リアルだからこそ、自然と双方向のコミュニケーションが起こるのです」(中澤さん)。
このテーマの回では、ともするといじめに発展しがちな炎上を「かっこ悪い」と認識し合えたことで、少なくともこのグループ内で攻撃する人はいなくなるであろう副次的な効果も。「周りの目が気になる年ごろ、『かっこ悪い』のは恥ずかしいですから」(中澤さん)。



■自立支援が求められる定時制高校の生徒にも前向きな変化が

中澤さんがワークショップを開催している都立高校は、学校によって個性も学力レベルもさまざま。中には定時制高校もありますが、今はメンタル不調で昼間の高校に行けなくなってしまった子も多いそう。学校には自立支援が求められていますが、2時間半のワークショップの後、他人とのコミュニケーションが難しくなっていた生徒が「アルバイトしてみようかな」と新しい世界に踏み出す勇気を得ることができた例も。また、担当していた大学生はそれまで「自分は無力なのではないか」と悩んでいましたが、人の役に立てたことが自信につながり、高校生と大学生の間でもいいコミュニケーションが生まれているのだとか。「近頃は、まったく会話がないという親子も珍しくありません。今後は子どもたちとのコミュニケーションに悩む保護者にも、ぜひ参加してもらいたいですね」(中澤さん)。




取材・執筆:オフラボ 監修:中澤仁美

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