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2019/11/22

ビジネスやデザインで「ストレス性疲労」の解決へ【第三回シンポジウムレポート】11月23日はストレスオフの日

ストレスオフの日(11月23日)を迎える前日の11月22日、衆議院第二議員会館第1会議室にて一般社団法人ストレスオフ・アライアンスの第三回シンポジウムが、開催されました。ストレスオフ・デザイン賞設立も発表された興味深い内容、ストレスオフラボでその概要をレポートします。

基調講演:ストレスオフ・デザイン賞設立に向けて
講演:ストレスオフな建築空間について
パネルディスカッション:ストレスオフ・デザインによる社会・産業貢献

■ストレスオフ・デザイン賞設立に向けて



プログラムは、ストレスオフ・アライアンス代表理事 恒吉明美氏(以下敬称略、恒吉)による開会挨拶と基調講演からスタートしました。

恒吉:明日11月23日は、勤労感謝の日でありストレスオフの日です。この会を通じて、まずはぜひストレスオフしていただきたいという思いがあります。そして今回のシンポジウムでは、当団体において、さらなる一歩となるストレスオフ・デザイン賞設立について発表いたします。
私自身はスキンケアブランド「メディプラス」の立ち上げ経験から、肌と心のつながりの大切さを日々感じてきました。またかつてストレスによる肌荒れを経験したことから、スキンケア商品だけではかなえられないことがあるということにも気づきました。それが、今日までのストレスオフについての啓蒙活動をしてきた原点です。ストレスというと、「ストレス発散」「ストレスフリー」という言葉がよく出てきます。ストレス発散はストレスを一時的に忘れる、原因とは向き合っていない状態。ストレスフリーはストレスを回避している状態ですが、仕事や居住地域環境などどうにもならないことが多いのではないでしょうか。「ストレスオフ」は、正しい知識や継続できる仕組みで、個人や社会が抱えるストレス性疲労をケアすること。言わば、ストレスの予防と、ストレス状態を軽減し維持することです。かといって、ストレスには悪い側面ばかりでなく、緊張感ややる気で人を育てるものでもあります。ストレスを受けたら、きちんとケアする。そこから逃げないで、向き合うことが大切です。

まずは、日本人のストレス性疲労状態を統計や根拠に基づきデータ化すること。そして各社の商品やサービスと連携し、市場づくること。これらが人々がストレスオフするための手立てやツールとなり、ストレスオフ社会の実現につながります。この一連の仕組みを社会へ実装すべく、ストレスオフ・アライアンスでは、「ストレスオフ・デザイン賞」の取り組みをスタートすることとなりました。ストレスオフ・デザイン賞とは、生体・客観評価のエビデンス及び、感性に基づく主観評価による認証プロジェクトです。選考部門は「プロダクト・デザイン部門」「環境デザイン部門」「ソーシャル・デザイン部門」の3部門。2020年11月にデザイン大賞の発表を目指します。

続いて、お茶の水女子大学の長澤夏子准教授 (以下敬称略、長澤)による講演「ストレスオフな建築空間について」です。

長澤:私が取り組んでいるテーマは建築を使う「人」の研究です。人を中心として建物の評価をすること、建築と健康やストレスを軸に考えてきました。まず歴史的な背景から見てみましょう。

産業革命が起きた19世紀のイギリスでは、建築環境の改善によって健康性が高まりました。主に衛生環境の改善で感染症が減っています。日本でも20世紀の大量供給時代を経て、経済的・効率的な供給のなかで、安全性や快適性の最低基準ができました。例としてはオフィスのビル管理法、住まいの最低基準や建築基準法などです。バブル崩壊後、一定の建築需要が終わり、量から質へ、バリアフリーや長寿社会対応住宅で安全性やアビリティが重視されるようになりました。アレルギーやシックハウスによる健康被害が低減し、健康の維持・増進における三要素として、身体的なものとしては「活動」、精神的な「楽しむ」「リラックス」、そして「一緒に」といった社会的視点を持つようになります。

健康、そして健康を拡大して考えるウェルネスにおいては、「WELL認証」という世界的な基準があるのをご存知でしょうか。WELL認証のWELLは’WELL Building Standard’であり、建物の健康性の性能評価をするアメリカの建築評価システムの一つ。人々の健康とウェルネスに焦点を合わせた建築や街区の環境の性能評価です。今や、環境性能とともに、建物を使う人に対するベネフィットを考える時代です。オフィスビルにとっては健康経営、個人の住宅にとっては健康住宅。建築や街など環境により、ユーザーの健康改善・維持・増進は重要な課題であり、身体的には運動不足、精神的にはストレス、社会的にはコミュニティの改善につながります。

私が研究を始めた20年前と比べ、近年は空間でのストレス計測も日常生活環境での人のストレス計測も、だいぶ簡便になりましたが、その背景には技術の進展があります。ストレス計測の項目例としては、生理計測は「発汗」「心拍」、ストレスマーカーであるコルチゾールやアミラーゼを計測できる「唾液」によって。「脳波」では感情に関わることがわかります。またストレスは心に関わるもの、心理評価も重要です。
以前「お化け屋敷でストレスを測る」という実験を、学生を対象に行いました。お化け屋敷は驚かせるためにさまざまな仕掛けがありますが、そういった何物かが飛び出してきた時だけでなく、「次は何が出てくるのだろう」と頭の中で次の驚きをシミュレーションをした時も、発汗することがわかりました。ストレスも同じで、例えば叱られている時だけでなく、「また怒られるかもしれない」と思って過ごしている時間にもストレス状態にある可能性があるのではないでしょうか。
(中略)
果たして、ストレスを環境で減らすことはできるのか。建築とストレスの関係性を問い、その相関を掘り下げてみていくことが重要になってきています。大規模なインターネット調査を行ったところ、住まいの満足でストレスや疲労感を減らすことができると、なぜか慢性腰痛も減るという相関がみられました。ストレスをオフできると間接的にいい結果をもたらすというわけです。

世の中ではストレスを定義づけるさまざまな方法が提案されていますが、一定ではなく、また概念も多義的です。先ほど恒吉代表理事からお話があったように、ストレスは一概に悪いものとは言えませんが、深刻な問題となる人もいます。日常の中で、ストレスに対しいかに意識的になれるか。ストレスはモチベーションや集中した活動の裏返しである場合もありますが、その場合も集中とともに積極的な休息が必要というわけです。楽しみとして、また日常生活の質の向上のためにも、ストレスオフ・デザイン賞を通して理解や普及が進むことを期待しています。



■チルアウト商品紹介



会場にて提供されたチルアウト リラクゼーションドリンク。主成分はテアニン、ヘンプシードなど。筆者も試飲しましたが、後味がよく、リラックスできる心持がしました。



■パネルディスカッション:ストレスオフ・デザインによる社会・産業貢献



【パネラー(敬称略)】
長澤夏子(お茶の水女子大学 准教授)
榎本誠也(株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント エグゼクティブ・プロデューサー エンタテインメント・ラボ長)
駒澤真人(WINフロンティア株式会社 取締役/芝浦工業大学 客員准教授)
佐藤勲興(株式会社ロッテ ロッテノベーション本部 ブランド戦略担当 チューイング企画課)

【ファシリテーター(敬称略)】
赤崎一浩(株式会社産業経済新聞社、写真左)

赤崎:今回は産経新聞というよりは、ストレスオフ・アライアンスに共感するものとしてファシリテータを務めさせていただきます。はじめに、みなさんから自己紹介をお願いします。

長澤:先ほど講演をさせていただきました。お茶の水女子大学で建築とストレスについての研究をしております。


榎本誠也 氏(株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)


榎本:ハイレゾリューションという技術ができまして解像度がCDの500倍、それで自然音を録ったら面白いんじゃないかと。自然の中に入ると非常に豊かな周波数がありまして、「KooNe」というシステムで環境音を整備しています。簡単にいうと自然の中にいるように音が聴こえるということ、鳥の鳴き声は上から聴こえ、川のせせらぎは下に流れます。これは快適環境づくりにつながります。


佐藤勲興 氏(株式会社ロッテ ロッテノベーション本部 ブランド戦略担当 チューイング企画課)


佐藤:株式会社ロッテにおいて、①おいしいから続けられる健康をお届けする商品、②いつまでもおいしく食べられる、噛むことと健康に関する活動の2軸で取り組みをしております。商品として、ストレスや疲労感を軽減する「マイニチケアガム」などを提供。「噛むこと研究室」という情報サイトもございます。噛むことのさまざまな情報を発信しています。ぜひご覧になってください。


駒澤真人 氏(WINフロンティア株式会社 取締役/芝浦工業大学 客員准教授)


駒澤:ウィンフロンティアは東京大学発のNPO法人ウェアラブル環境情報ネット推進機構が母体となっていまして、ウェアラブルセンサ・ネットワークのフロントランナーとしての知見とノウハウを活用して情報発信しています。生体情報センシング技術としてウェアラブル心拍センサや、スマートフォンのカメラによるココロの見える化アプリ「COCOLOLO」も提供。150万以上ダウロードがあり、ここからビックデータも貯まってきております。

赤崎:自己紹介ありがとうございました。それでは、最初に榎本さんから音の分野での取り組みをお話しいただきます。

榎本:健康の維持・増進に寄与する環境の研究として、ハイレゾ音源でリラックスしたという実証実験を行っております。傾向としてハイレゾ音源にはリラックス効果があることが分かっています。さらに、「KooNe」で再現したハイレゾによる森林の音と都市の音を比較したところ、森林の音の方がリラックスできる傾向にありました。また八千代市立中央図書館での実証実験において、KooNeがある方が、いごこちの良さや、周りの雑音が気にならなくなるといった影響が見られた結果もあります。
KooNeによって生産性向上を目指すオフィスへの納入事例もあります。朝と夜で音が変わり、まるで森の中で一日を過ごしているような自然音を体験できます。もう少し規模の大きな感性の話で言うと、近年は「バイオフィリックデザイン」が注目を集めていますが、ストレスを軽減し元気を取り戻す、集中力を上げ、快適かつ効率的に仕事ができる、幸福感が向上する、働く場所の健康と福祉を向上させことが期待できると言われています。

長澤:バイオフィリックデザインは新しいデザインですよね。違った人間関係が生まれたりと音は空間においてとても大きな要素であり、体験したことがある人が増えていくと、必要不可欠なものになっていくのではないでしょうか。

赤崎:こういったスペースにいると自律神経はどういう風になるのか、WINフロンティアさんに知見がありますので駒澤さんにそのあたりお伺いしたいと思います。

駒澤:センシングで大量のデータで評価していくことが重要になってきています。東京・名古屋間を往復バス移動したユニクロさんとの実験では、「EZYジーンズ」はスウェットパンツ並みに疲れないという結果が出ました。またコニカミノルタさんと行ったプラネタリウム鑑賞時のリラクゼーション効果の検証では、どういうコンテンツをつくればリラックスできるのかを調べ、その結果から生まれたコンテンツも上映されています。ヨガ施設のLAVAさんとは、どのような照明、色彩が感情が安定するかを検証。また全国にはたくさんの森林セラピー基地がありますが、ストレスオフ県第1位も獲得している鳥取県の智頭町では森林セラピー専用のアプリをつくり、リラックス度がわかるような取り組みをしています。
弊社のこれらの知見なども含め、ストレスオフ・アライアンスでは、ストレスオフ・デザインマニュアルを構築中です。

赤崎:ロッテさんのところでは薬事含めて苦心されたと伺っています。佐藤さんいかがでしょうか

佐藤:商品に結びつけてはいけないところがありましたが、2015年に「噛むこと研究室」を立ち上げたことで、以前より積極的に発信できるようになりました。「マイニチケアガム」については、機能性表示食品として、GABAのエビデンスを用いています。噛むこととは紐づけることはできませんが、GABAは仕事や勉強などによる一時的・精神的なストレスや疲労感を軽減することが報告されているため、「ストレスや疲労感を軽減する」というコピーが使えるようになりました。

赤崎:ありがとうございます。ストレスをためない社会をつくっていく上で大事なこと、長澤先生いかがでしょうか。

長澤:薬事法、機能性表示食品は効果が認められないとなかなか出していけませんよね。GABAなどと同じように、それに続くものがもっともっと出ていけばと。デザインにしても、「評価の仕方」を発見していかなければならないと思います。お化け屋敷なんて、ストレスをかけて怖がらせて、でもみんな最後は「楽しかった」と言ってもらえるよう設計を考えている。こんな例を見ても、ただストレスから逃げるだけではないストレスオフの視点も重要かと思います。

赤崎:来年のこの時期に、ストレスオフ・デザイン賞の表彰式を考えているわけですが、最後に一言ずつお願いします。

駒澤:今後人間を中心にして、心を大切にした商品が重要となる時代に。それに役立つデータ整備をしていければと思います。

佐藤:体温計や体重計など毎日測るもののように、ストレスも測るような動きがあれば更にストレスオフの動きは高まっていくのではないでしょうか。そういった発信を商品を通してやっていければと思います。

長澤:もちろんデータだけがすべてではありませんが、しっかりとしたエビデンスは重要です。それをもってサービスが提供できれば、しっかりとストレスオフの基盤が築けるのでは。デザイン賞もそういった裏付けを厚くしてくことで、信頼が増すのではないでしょうか。

榎本:従来のモノづくりから大きく変化してきていると思います。人間のパフォーマンス、人に寄り添う感性デザインがこれから大切になっていくと思います。

赤崎:100歳時代の中で健康寿命に貢献するストレスオフ・デザインが求められています。そんな社会を実現するため、ストレスオフ・アライアンスが中心となって進めていければと考えます。皆様よろしくお願いいたします。

最後は、ストレスオフ・アライアンスの立ち上げから携わっていただいている衆議院議員山本ともひろ氏(以下敬称略、山本)による挨拶で閉会となりました。

山本:今日は空間関係のお話をいただきましたが、ストレスオフというのは政治もしっかり関与していかねばと考えております。ストレスオフ・デザイン賞をつくって世の中に発信し、グッドデザイン賞やACCアワードのように世の中に役立つものに。アライアンスのメンバーだけが動いてもムーブメントにはなかなかなりづらいので、ご参加くださった皆様も職場や商品へのストレスオフの取入れを考えていただき、創意工夫によって社会がストレスオフできる流れを一緒に作っていきましょう。
以上で閉会の挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。



ストレスオフ・アライアンス、第三回シンポジウムレポートいかがでしたでしょうか。ぜひ皆様でシェアいただき、ストレスオフ・ムーブメントを起こしてまいりましょう。そして、11月23日はストレスオフの日、大切な方のストレスオフを願う一日にできれば幸いです。



【第三回シンポジウム概要】
▼日時: 2019 年11月22日(金)15:00~17:30
▼場所: 衆議院第二議員会館 第 1 会議室(東京都千代田区永田町2丁目1−2)




執筆:井上大樹(ストレスオフラボ・メディプラス研究所)

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