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2017/07/13

触れることで感情を呼び起こす「C 触覚線維」とは?【肌からストレスオフを考える③】

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚は、私たちが生きる上で重要な五感です。この内4つは特殊感覚と呼ばれ、視覚ならば眼、味覚ならば舌など、特定の器官のみが感知できる感覚ですが、「触覚」だけは別の分類であり、まだ知られていないさまざまな可能性を秘めていると言われています。その一つが、触れることが心をも動かすという効果。今回も、桜美林大学・山口創先生にお話をうかがいます。

■触れることで感情を呼び起こし、副交感神経を優位に。注目のC触覚線維

神経線維の先端に受容器をもつ触覚センサー(触覚受容器)は全身に分布し、皮膚の深さや順応する速さによって、以下の4つの物理的な刺激に反応します。

●マイスナー小体: 皮膚の浅い位置にあり、順応が早い。速度などを検出する。
●メルケル盤  : 皮膚の浅い位置にあり、順応が遅い。刺激の強度などを検出する。
●ルフィニ終末 : 皮膚の深い位置にあり、順応が遅い。皮膚の引っ張りなどを検出する。
●パチニ小体  : 皮膚の深い位置にあり、順応が早い。加速度などを検出する。

ところが最近、それらとは異なり、触覚に反応しているけれども受容器をもたず、神経線維の末端がむき出しのまま刺激を受容しているものが発見されました。それが「C触覚線維」です。

<皮膚の構造>



C触覚線維が他の4つの触覚受容器と異なる最大の特徴は、感情に関わるという点です[1]。つまり、触れたことで「気持ちいい」「気持ち悪い」といった感情を生み出し、すなわち「触れ(られ)ているのは自分だ」という自己意識にも関わっています。マッサージを受けたりセルフマッサージをすると、人は自分の意識と向き合うようになります。そして、自分のことをあれこれ考え始めるのです。

第二の特徴は、C触覚線維は毛の振動による感覚を脳に伝えるため、皮膚の無毛部にはない点です[2]。無毛部は、人間の身体の中で手のひらと足の裏だけです。ですからこれらの部位で触れても、実はあまり気持ちよくは感じません。ペットやふわふわのタオルなどを、試しに手のひらと手の甲で撫でてみてください。


■触れ方は速度がポイント。5cm/秒を意識しよう

そして第三の特徴は、触れる速度によって神経の興奮が変わってくるということです。研究によると、秒速3~10cm(ピークは5cm程度)の速度で触れたときだけ反応し、それ以下でもそれ以上の速度でも興奮しません[2]。

私が行った実験では、大学生のペアで、一方が相手の背中を3種類の速度(1cm/秒、5cm/秒、20cm/秒)で撫でたときの、撫でられた人の自律神経活動を測定しました。すると秒速5cm/秒のときに副交感神経が優位になる、つまりリラックスすることがわかりました。C触覚線維が興奮すると、脳の視床を介して、副交感神経を優位にしてリラックス効果を高めるからです[3]。セルフマッサージ、あるいは毎日スキンケアをする時も、秒速5cm程度のゆっくりした速さで触れてみてください。無意識に行うよりも、ストレスオフの効果を感じることができるでしょう。

<3種類の速度で背中を撫でられた場合の自律神経活動>

(注)グラフの棒が0以上の場合は交感神経が優位な状態。0以下の場合は副交感神経が優位な状態を示す。



(引用)
[1]Olausson, H. et al., (2002) Unmyelinated tactile afferents signal touch and project to insular cortex. Nature Neuroscience,5, 900 – 904.
[2]Olausson, H. et al., (2008) Functional role of unmyelinated tactile afferents in human hairy skin: sympathetic response and perceptual localization. Experimental Brain Research, 184,135–140.
[3]山口創 (2015) 皮膚という「脳」 東京書籍


肌は第三の脳である【肌からストレスオフを考える①】
「触れる」で分泌を促す。ストレスを緩和するオキシトシン【肌からストレスオフを考える②】



執筆・監修:山口創

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